以下雑感垂れ流し。
この実験はヨーロッパなどで始まっているEVカーシェアの流れを日本でもということで、横浜市と日産が共同で横浜市内限定のサービスを行っているというもの。
何が新しいかというと、登録さえすればEVを身近にだれでも使えるという点、そして日本では法律上認められていないレンタカー無人店舗での乗り捨てをできるような制度を実験としてに用意することで、2地点間の移動にカーシェアリングを利用できるようなシステムになっている点であろうか。
たしかに現状の日本でのカーシェアは、自宅や仕事場の近隣の駐車場から、自家用車のちょい乗り用途を代替することはできても、都市内全体で自動車を共有するということはできていない。そもそも、自動車を不特定多数のユーザーがフレキシブルに共有する社会を法律が想定できていなかったというだけで、法規や駐車場オペレーションさえ改善する事ができれば、現在大規模にサービスを展開しているカーシェアリング業者も同様のサービスができるのかもしれない。
今回の実験で使用している車両は、ルノーがヨーロッパですでに発売しているTwizyというEVのバッジエンジニアリング版の車両「NISSAN New Mobility CONCEPT」というもの。基本的にはルノーの製品を最低限日本で運用できるように改造しているものなので、ウインカーとワイパーのレバーはISO準拠の位置である。
ヨーロッパではサブAセグメント車として、いわば日本で言う「ミニカー」に近い法的位置づけのクルマではあるが、今回の実験では登録上は軽自動車(ただし、特例措置によって高速道路や自動車専用道の走行は認められていない)という位置づけになっており、そこもヨーロッパの規格に準拠した車両をそのまま日本に持ってきたことに対する苦悩を感じられる。
足回りは見た感じ前後ともストラットで、カウルからアームが張り出した様子はスポーツカーのような勇ましさ。
クレジットカードと免許証さえあればだれでも登録ができ、登録完了後の講習会を受講さえすればすぐさまチョイモビユーザーになれるという手軽なシステムになっている。
インターネットやスマートフォンアプリ経由で近隣の車両と、返却場所を選択し、その手続から30分以内にその車両にキーである会員カードをかざすと乗車ができるという仕組みになっている。
実際にカードが発給されたその日に、講習会を受けた日産本社から相鉄沿いまで試しに乗ってみようと考えた。まずアプリを使って近隣の空き車両を見つけることはすぐに出来たものの、残念ながらなかなか都合のいい返却場所が見当たらない。おそらく車両の台数より少し多い程度の駐車場しかチョイモビのステーションとして提供されていないのだろう。利用率が向上すれば状況は幾分か改善されるのかもしれないけれど、都市内をフレキシブルに移動するための手段にするにはまず車両の数よりもステーションのバッファー量を大幅に増やす必要があるのではないかと感じた。
また、今回のステーションが殆ど市街中心部に集中していることも若干の物足りなさを感じた。斜面住宅地や、鉄道空白地帯の多い横浜の住宅地の特性上、本来こういった簡易的なモビリティはそれらのエリアの足を補完する意味合いを持たせることでより存在意義が強まるようにも感じられる。その点、山手の丘の上や、三渓園にステーションを設けていることはそれらの意味合いを持ったユースに対してのデータを集める目的が大きいのかもしれない。
車両に乗って完全な主観から感じたものは、独特な面白さと、その一方での安全性への不安であろうか。
これまで乗ったことのあるEVやHVとは異なり、出足を意図的に遅くしてあるというのは非常に面白い。スタートはスロットルべた踏み程度で他の一般車の流れに乗るのにちょうどいい一方、30km/hからの加速はいかにもEVらしいトルクに満ちた真っ直ぐなものなので、スロットル開度を頻繁に変えながらの運転となる。窓のないオープンエアということもあり、モーターの音も普段聞き慣れた国産のHVやEVの音とは異なり、粗野で大きく感じられ、スロットルを頻繁に開け閉めすると聞こえてくる力行と回生の音の変化は、あたかもフォーミュラーE やルマンカーのオンボード映像のよう。スロットルと回生量のグラフが出るのもその気分を助長する。パワステのないことによるハンドルへのゴツゴツした感覚もまたよい。
足回りは硬く、ロールをほとんどしない。しかしながら、優秀なものかというと少し違うようにも感じられ、その硬さはサスペンションのストロークの不足から来るんじゃないかというような感じのもの。停車中にコツコツとフロアを軽く足で叩いただけで、小刻みに車体が反応するような程度のショックアブソーバーの性能。
横浜に多い速度の速い交差点や下り坂のような状況を一般車の流れに乗って走るだけで明確にアンダーステアが出るし、ABS、ESPやトラクションコントロールのような類もなく、そもそもMRに近い駆動方式なので、不慣れなドライバーが下り坂のカーブなど雨天などの悪条件下での操作を間違えればスピンをする可能性は十分にある気がする。
ボディが小さく、四隅は把握しやすいので、路地だろうが駐車だろうが、特に困ることはまずない。
シザードアは駐車の時などに上げっぱなしにして車体の周りを見るにも便利かもしれない。
ボディが小さく、四隅は把握しやすいので、路地だろうが駐車だろうが、特に困ることはまずない。
シザードアは駐車の時などに上げっぱなしにして車体の周りを見るにも便利かもしれない。
安全性に関しては、さっきのダイナミックセーフティもさることながら、やはりほぼオープンな事もあって衝突安全性がまず不安になる。ちなみに、EURO NCAPのテスト映像は以下のとおり。健闘していると捉えるべきか、それとも。
料金に関しては、一分単位の時間制ということもあり、渋滞を避けたルート選択をしっかりできるユーザーならば相当お得に使えるのではないかと思う。二人乗ることもできると考えれば、20円/分の料金設定は、タクシーやバスに対しても競争力があるかも知れないとも。
今回実際に使って感じたことは、小型モビリティの可能性と物足りなさであり、今後の法改正などを受けて普通車のコンパクトカーや軽自動車のカーシェアが2地点間での移動を可能にされたときに、あえて今回のような小型モビリティを都市内カーシェアに使う意義が見出しにくいということでもある。それは、小型モビリティにメリットがないということでは決してなく、現状では危険の多い都市内の自動車交通の中にその小型モビリティを混ぜて走らせることのデメリットの方が大きくなってしまっているということのようにも感じられた。
安全補助技術の普及やドライバーのマナーとスキルの向上の果てには小型モビリティを使用したカーシェアが真価を発揮する時が来るかも知れないけれど、現状ではリーフなどの「乗用車」然とした車両をシステムの核にしたほうが結果としてユーザへの敷居を下げて、システムとしての浸透を図れるのではないかという考えも浮かんだ。